リフォーム業者にとって、見積もりをするというのは、実は、とても手間ひまかかるものです。

リフォーム会社に勤めていたころから、「おまえは皆より見積書できるの遅いなあ」と上司に言われていた私のことなので、余計にかもしれませんが、見積もりというのは、単に「工事にかかりそうな金額を計算すること」ではありません。
まずは、どういう工事を、どんな材料や商品を使ってするのかが特定できなければ、数量や金額の出しようがありませんから、
仮であっても、あるていど具体的なプランを確定(想定)しなければ作ることはできません。

さらに、工事の流れをシュミレーション、つまり、
「頭の中で、一度工事をしてみる」という作業が必要になります。
もしも、見積もりの段階で、計上間違いや漏れがあると、実際の工事にも関わってくるからです。

例えば、「間仕切り壁を取って、二つの部屋を一つにして広くする」といった工事の場合、完全に一つの部屋に見えるようにするのか、開閉できる間仕切りを入れて、二部屋分の広さを自由に使い分けできるようにするのか、また、天井は二部屋分を高さを合わせてフラットにつなげるのか、天井を仕切る垂れ壁は残してもよいのか、など、細かい部分まで、いろいろな選択肢を考えます。
そういった、細部をどう納めるかによっても、見積もりは変わってくるのです。

私の個人的なスタイルとしては、お客様と「まずはたたき台のプランを作りましょう」と、いろいろなご希望をお聞きします。
そして、イメージパースを描いたり、工事の規模によっては、CAD図面や3次元ソフトなどを駆使しつつ、どんな可能性があるかを、何パターンか挙げてみます。

それから、「じゃあ、とりあえずこのプランなら、いくらぐらいになるか出してみましょう」という感じで持ち帰ります。

そして、具体的に、天井は、壁は、巾木はどのように、つなげるのか、スイッチやコンセントの移動などは必要か、素材は、商品のグレードは、などと、頭の中で工事の流れを追いながら、商品や材料の数量、施工部位や面積などを拾い出していくのです。

だから、3次元ソフトで図面を立体的におこし、壁や床の仕上げ材を貼ったり、照明器具を置いて、光量を計算させたり、といった、たたき台のための基本的な作業だけで、あっという間に一日がたってしまう、ということもあります。

そして、見積書をまとめあげるのに、いろいろなメーカーさんのカタログを引っ張り出し、あっちをめくり、こっちをめくり、値段や品番やサイズなどを見積書に書き込んでいくのは、とても時間のかかることなのです。

「リフォームをする時は、三社くらい相見積もりをとりましょう」など、リフォーム雑誌やWebサイトには、書いてありますが、「見積もりって、こんなに手間がかかるのになあ~」と、思ってしまいます。
(もちろん、見積書をプラン的にも金額的にも、しっかりと見比べられるためなら、相見積もりはとられたほうが良いです。)

そして、相見積もりの時に、「見積もりができましたので、ご説明に伺いたいのですが…」と、お客様にお電話すると、
「あ、それなら、ポストに入れといてください」なんて、さわやかに言われてしまうことも。

ちょっと、愚痴モードになってしまいました。

とにかく、見積もりは、作るにも、読み取るにも(お客様にも)とってもエネルギーのいるものです。
納得のいく工事に向けて、お互いに、しっかりと見積もりに向かって参りましょう!